歴史探訪スクール第2回オープン講座「新宮城下町遺跡発掘調査の成果」(6月30日開催)実施報告

令和元年6月30日(日)、歴史探訪スクール第2回オープン講座「新宮城下町遺跡発掘調査の成果」を福祉センターにて開催いたしました。講座に参加していただいた皆様、講義を担当していただきました村田弘(むらたひろし)先生、誠にありがとうございました。

それでは、当日の様子をご報告いたします。

 

今回の講座では約60名の方々にご参加いただきました。

 

 

 

 

 

 

 

村田弘先生は、公益財団法人和歌山県文化財センターに勤務されております。

今回は、昨年度ほぼ一年をかけて実施された第2次発掘調査の概要、なかでも中世の湊に係る遺構を中心に講義いただきましたので、ご紹介します。

講義の前半は、新宮城下町遺跡には三つの面(上から江戸時代、中世、縄文時代中期)があるなかで、中世の時代を中心に発掘現場の写真をスクリーンに映しながら、それぞれについて説明を交えながら、発掘の話をしていただきました。

 

前半

Ⅰ.遺跡について

「遺構はどうやって見つけるんですか」という質問をよく受ける。人為的に埋めると土の色が周囲と微妙に違ったりするので、遺構があることがわかり、それを一つずつ発掘していく。今回は大小合わせて3600ほどの遺構がでてきた。建物の柱の跡であると思われる穴もあるが、数が多すぎて、もともと建っていた建物の形がわからない。また、発掘調査を宝探しのように考えられている人もいるかもしれないが、決してそのようなものではなく、何がどこから出てきたかということが、非常に重要な意味を持っているということを知ってもらいたい。

Ⅱ.倉庫の話

今回の調査で40くらいの地下式倉庫が見つかった。人が生活している集落では、倉庫はそんなにない。これまでの調査結果をみて、おそらく中世の湊だったのだろうと思う。中世の主要な湊は、日本海側に多い。大河川の河口部で少し上流へさかのぼったところ、また、波風の影響を受けづらい入り江状になったところに作られる。中世の湊跡が見つかるのは稀である。今回の調査で見つかった石積み倉庫の基本形は、正方形なり長方形の主体部に小さな入り口のようなものがついているのが特徴である。多数が密集して見つかっており、倉庫というより「倉庫群」といえる。火災を受けて当時の構造がわかる「焼失建物」で残りのいいものが出てきたが、「剥ぎ取り」と言われる最新技術によって記録保存を行ってくれた。将来的に活用として日の目を見ることになると思う。

 

後半

Ⅰ.出土遺物

第2次発掘調査のみでコンテナ202箱分の遺物が出てきた。土師器や志野焼、織部焼など、焼き物は割れていても時代がわかる一つの手がかりであるため、非常に重要である。また、2次調査ではろうそく立てである瀬戸焼の燭台(しょくだい)が出土した。形がわかるもので燭台が出たのは和歌山で初めてではないだろうか。山茶碗(中世に東海地方で日常的に使用されていた茶碗)も出てきた。和歌山では、新宮、那智、串本くらいまでは出てくるだろうが、田辺の方ではほとんど出てこない。紀伊半島の東側に位置する新宮ならでわのものである。いくつか会場に持ってきているので、また見てもらえれば。

 

 

 

 

 

 

 

村田先生は講義の最後に、「発掘調査とは、宝探しではなく、一つ一つの遺物が時期などをあらわすものである。今回の遺跡は湊として見ているし、湊が発見されることがとても珍しいことである。調査研究をを重ね、遺跡の性格をより明らかにする必要はあるが、国の史跡になるくらいの十分な価値があると考える。また、今回出てきた倉庫の中に保存していたものが何であるかが正直わからない。15世紀くらいで、倉庫の大きさに入るものが何かを明らかにするのが課題である。」とまとめられました。

 

講義は1時間半ほどで終了いたしました。参加していただきました皆様、講義を担当していただきました村田先生、本当にありがとうございました。

 

次回の講座は8月31日(土)、会場は「新宮市福祉センター」で14時から開催します。講義名は「世界遺産15周年~世界遺産の価値を問う~」です。講師は、新宮市教育委員会教育長である速水盛康(はやみしげやす)さんです。

 

参加申込は新宮市教育委員会【文化振興課】へ電話・FAX・メールのいずれかでお申し込みお願いします。参加対象者は中学一年生から大人までです。

中学生、高校生は無料となっていますので、歴史好きの学生さんたちもふるってご参加ください。一講座だけの申し込みも可能ですし、あらかじめ年間を通しての申込みも可能です。一人年間1,000円となっておりますので、ぜひご利用ください。

詳細は下のリンクからお願いします。

令和元年度 歴史探訪スクール 申込み方法 年間スケジュール

今回参加していただいた参加者の皆様、そして新宮・熊野地方の歴史や文化に興味がある皆様。次回のご参加を心からお待ちしております。

文化振興課・連絡先

TEL:0735-23-3368

FAX:0735-23-3370

E-mail:bunka@city.shingu.lg.jp